リアルタイムストロンチウム90カウンター

 2011年、福島原発事故によって、大量の放射性汚染水が海へ漏れ出ました。特に危険な核種は90Srで体内に取り込まれると138Csと比べて最大120倍危険です。化学的処理で検査した場合、測定時間が数週間から1ヶ月程かかり長いため、海産物を卸売りすることが困難です。  我々は、従来のシンチレーション検出器とは異なり低エネルギーベータ線に感度が低く(つまり環境放射能: カリウム40, ラドン222など)、ストロンチウム90の娘核のイットリウム90の高エネルギーベータ線に高い感度を持つ装置を開発しました。



 装置はシリカエアロゲルと波長変換ファイバー、光電子増倍管で構築されており、シリカエアロゲルからのチェレンコフ光放射の有無をファイバーを通して読み出してます。90Yからのβ線で発光し、40Kからのβ線では発光しない仕様でエアロゲルを設計しています(屈折率1.04)。周りはプラスチックシンチレータと波長変換ファイバーを用いたベトー装置によって宇宙線ミューオンの雑音を抑制します。

 試料は化学的抽出(前処理)は一切なく、ペースト状にして乾燥して装置にセットします。これは試料がすでに放射平衡状態であるのでイットリウム90の放射能を測定することがすなわちストロンチウム90の放射能を測定することを意味しています。1時間で試料内のストロンチウム90放射能濃度を測定することができます。もちろん時間をかければさらに良い精度で測定することができます。精度を2倍良くしようとすると時間は4倍かかります。また精度は2倍荒くていいのであれば時間も半分で良くなります。



 研究室で有効面積30cm×10cmの装置が試作されており、性能改善、試料検査を進めています。  試料検査や装置製造依頼に関しては以下までお問い合わせください。
  河合秀幸 (准教授) kawai_atmark_hepburn.s.chiba-u.ac.jp
  伊藤博士 (研究員) ito.hiroshi_atmark_crystal.kobe-u.ac.jp
  児玉諭士 (技術補佐員) kodama_atmark_hepburn.s.chiba-u.ac.jp
  (_atmark_を@に変えてご連絡ください。)

参考
>>JPS Conf. Proc. 11 070002 (2016).